固定資産税は、土地や建物などの不動産を所有している人に課せられる税金です。
誰も住んでいないからといって免税されることはなく、空き家にも税金はかかりますので注意してください。
社会の動きに敏感な人であれば、「法改正によって空き家の固定資産税が6倍になった」というニュースを耳にしているのではないでしょうか。
とはいえ、「そもそも空き家にかかる固定資産税はいくらなのか」「増税を回避する方法はないのか」という疑問を抱くと思います。
この記事では、「空き家にかかる固定資産税がいくらなのか」から「6倍に上がるタイミングと増税対策」について紹介していきます。
空き家にかかる固定資産税はいくら?
空き家にかかる固定資産税は、「特定空き家」に指定されているかどうかで異なります。
特定空き家とは、2015年に国が制定した「空き家対策特別措置法」によって、固定資産税と都市計画税の軽減措置がなくなるなどのペナルティの対象となっている空き家のことです。
特定空き家に指定されてしまうと軽減措置の適用を受けられなくなり、固定資産税が6倍になってしまいます。
空き家の固定資産税が6倍になった背景には、空き家が増え続けたことによって深刻な社会問題へと発展したことがあります。
これ以上空き家を増やさないために、また今ある空き家問題を解決するために国が考えた対策が、固定資産税の増税ということです。
固定資産税の軽減措置は、以下のとおりです。
200㎡以下の部分(小規模住宅用地)の軽減措置
固定資産税 | 土地の評価額×1/6 |
---|---|
都市計画税 | 土地の評価額×1/3 |
200㎡を超える部分(一般住宅用地)の軽減措置
固定資産税 | 土地の評価額×1/3 |
---|---|
都市計画税 | 土地の評価額×2/3 |
では軽減措置の適用を受けた場合と、空き家にして軽減措置の適用を受けられなくなった場合で、どのくらい差があるのか計算する方法を紹介します。
(特定空き家に指定される条件については、後述で詳しく解説します。)
軽減措置の適用を受けた場合の固定資産税額
軽減措置の適用を受けた場合の固定資産税額は、以下のとおりです。
固定資産税評価額は、毎年届く納税通知書に記載されていますので確認してください。
地域によっては、さらに以下の都市計画税が課せられます。
固定資産税と都市計画税は、建物部分と土地部分それぞれ分けて計算してから合算して求めます。
計算例
たとえば建物部分の評価額が1,000万円、土地部分の評価額が2,000万円の空き家の固定資産税と都市計画税は以下のとおりになります。
都市計画税=(家屋の評価額1,000万×0.3%)+(土地の評価額2,000万円×1/6×0.3%)=4万円
固定資産税18.7万円+都市計画税4万円=22.7万円
軽減措置の適用によって土地の評価額を6分の1にできるとはいえ、住んでいない不動産に対して毎年22.7万円も支払わなければならないということです。
次に、特定空き家に指定された場合の固定資産税額を計算していきます。
法改正によって特定空き家に指定された場合の固定資産税額
法改正によって特定空き家に指定された不動産にかかる固定資産税を求める式は、以下のとおりです。
本来であれば、軽減措置として土地部分にかかる固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1されますが、特定空き家に指定されていると適用を受けることができず、多額の税金が課せられてしまいます。
計算例
上記と同様の条件で計算していきます。
都市計画税=(家屋の評価額1,000万×0.3%)+(土地の評価額2,000万円×0.3%)=9万円
固定資産税42万円+都市計画税9万円=51万円
特定空き家に指定されると土地の評価額が6倍になってしまうため、軽減措置の適用を受けた場合と比べて28.3万円も高いという結果になりました。
これが空き家を所有し続ける限り、ずっと課税されます。
空き家の固定資産税が6倍に上がるのはいつから?
空き家の固定資産税が6倍に上がるのは、「特定空き家」に指定された翌年からになります。
特定空き家とは、空き家対策特別措置法によって、固定資産税と都市計画税の軽減措置がなくなるなどのペナルティの対象となっている空き家のことです。
軽減措置がなくなると固定資産税が6倍になるのは上述のとおりですが、都市計画税についても3倍になります。
特定空き家に指定される条件については、国土交通省のホームページに記載されていた下記の記述を参考にしてください。
・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
・著しく衛生上有害となるおそれのある状態
・適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
つまり倒壊する危険性があったり、悪臭や害虫の原因となって近隣に迷惑をかけている場合に特定空き家に指定され、6倍の固定資産税が課せられるということです。
軽減措置の見直しによって更地と同様の税金が課せられる
これまでは更地にすると軽減措置が受けられず、建物が建っていれば軽減措置が受けられました。
しかしそれによって、あえて空き家のままにする人がいたため、国は空き家に対する軽減措置を見直しました。
空き家のままにしておくと、多額の税金が課せられてしまうということです。
特定空き家に指定されてから強制解体(取り壊し)されるまでの流れ
特定空き家に指定されると、最終的には役所によって家が取り壊され、解体費を請求されるという事態にまで発展します。
特定空き家に指定されるまでの流れから、指定されてから解体されるまでの流れは以下のとおりです。
市町村長から助言・指導がおこなわれる
特定空き家の条件を満たしてしまうと、市町村長から空き家の状態の説明があったのち、改善するよう指導されます。
ここで改善すれば問題ないのですが、改善しなかった場合は特定空き家に指定されてしまいます。
特定空き家に指定され、修繕または処分するよう勧告される
市町村長からの助言・指導を無視すると特定空き家に指定され、修繕または除去するよう勧告されます。
固定資産税と都市計画税の軽減措置は、勧告された翌年から適用を受けられなくなります。
勧告に従えば、特定空き家の指定は解除されますので、放置せずに何らかの対処をおこなってください。
勧告にかかる措置をとるよう命令される
勧告されてもなお空き家を放置し続けると、勧告に従うよう命令されます。
猶予期限を設けられ、その期間内に空き家の対処をおこなわなかった場合、50万円の罰金が科せられます。
空き家を解体させるなど代執行がおこなわれる
最終的には、所有者に代わって自治体が空き家解体に踏み切ります。
空き家の解体にかかった費用などは、所有者に請求されます。
特定空き家に指定された実家の固定資産税を払わないとどうなる?
固定資産税を払わないと空き家はもちろん、納税義務者の資産が差し押さえられ、強制徴収されます。
相続した実家の固定資産税納税通知書が届いたら「本当に自分が払わないといけないのか」「他の相続人と按分したい」などと考え、納税が遅れてしまう場合もあるかもしれません。
相続登記していなければ被相続人名義で納税書が送付されるため、なおさら誰が払うべきなのかわからず、納税が遅れてしまう場合もあると思います。
しかし固定資産税を滞納してしまうと延滞税が課せられてしまいますし、資産が差し押さえられるなどのリスクがあるため、払わないまま放置するのは絶対にやめましょう。
相続した不動産の税金は誰が払うべき?
相続した不動産の税金は、相続人が払わなければなりません。
相続人が複数いる場合には相続人全員が納税義務者となりますので、話し合ったうえで納税方法を決めてください。
相続した不動産を売却する場合、一時的に所有者を変更すると思いますが、1月1日時点で所有者となっていた人に納税書が届いてしまいます。
その場合、売却代金を按分するときに固定資産税を差し引いた金額を分けることになりますので、とりあえず納税しておきましょう。
遺産協議の結果、不動産を相続する人が決まっている場合は、他の相続人に納税の義務はありません。
空き家の固定資産税が増税するのを回避する方法
誰しも、増税は阻止したいと考えるはずです。
空き家の固定資産税が増税するのを回避する方法は、以下のとおりになります。
- 国や自治体からの支援を利用する
- きれいさっぱり売却する
- 賃貸にして活用する
国や自治体からの支援を利用する【減免・補助金制度・空き家バンク】
増え続ける空き家に対して、国や自治体はさまざまな対策に乗り出しています。
特定空き家への行政指導もその一環ですが、指導だけでなく、所有者が空き家を修繕・除去することの支援もおこなっています。
国や自治体がおこなっている主な支援は、以下のとおりです。
- 空き家の解体費用の補助
- 空き家を地域活用するためのリフォーム費用の補助
- 除去後の固定資産税の減免
- 空き家バンクによる入居者の呼び込み
支援内容は自治体によって少しずつ違いますので、詳しく知りたい人は管轄の役所に問い合わせてください。
きれいさっぱり売却する
空き家を持っていてもお金と手間がかかり続けるだけですので、きれいさっぱり売却してしまうのが一番です。
親から相続した実家の場合、売ることに抵抗を感じるかもしれませんが、この先ずっと固定資産税などの維持費を払ったり、管理し続けたりできるのでしょうか。
空き家の状態が長く続くと、建物が老朽化して売るに売れない状況になりかねません。
権利関係の整理や家財の片付けなどに時間がかかる場合もありますので、準備を含め、とにかく早く行動に移すことが大切です。
すでに老朽化した建物の場合は、国や自治体の補助金制度を利用し、更地にして売却する選択肢もあります。
ただし更地にすると固定資産税が上がるため、売れる見込みがある場合に有効な方法です。
不動産業者への相談は無料ですので、一度相談してみると良いでしょう。
空き家を売却する方法や利用できる特例について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
空き家の売却で損をしないためのポイント|税制優遇を利用して賢く売ろう
空き家の売却で利用できる特例や有利に売る方法について解説しています。特別控除などの税制優遇について知っておかないと、何百万円も損をするかもしれません。相続した空き家の処分で困っている場合など、売りたいけどどうすれば良いか分からない人は参考にしてください。
不動産業者探しは一括査定サイトを利用するのがベター
本などで紹介されて利用者が急増したため知っている人も多いと思いますが、不動産一括査定サイトを利用すれば、手間なく優秀な不動産業者が見つかるのでおすすめです。
親の実家を売却する場合は提携数が多く、幅広い地域に対応してもらえる一括査定サイトを選ぶと良いでしょう。
しつこい勧誘もなく、いくらで売れるか知りたいだけの人でも気軽に利用できます。
不動産一括査定サイトについては、下記の記事でも詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
不動産一括査定サイト大手12社を徹底比較!おすすめサイトから選び方まで解説
不動産一括査定サイトを利用すれば、物件がいくらで売却できるか効率的に調べられるだけでなく、質の良い不動産会社にも出会えます。できるだけ好条件で売るためには、サイト選びが重要。不動産のプロである管理人が、おすすめのサイトと選び方のポイントを解説していきます。
賃貸にして活用する
空き家を売却することに対してどうしても抵抗があるのであれば、賃貸にして活用するという手もあります。
「一度人に貸したら、戻ってこないのでは」と思われる人もいるかもしれませんが、定期借家契約で貸せば問題ありません。
定期借家契約とは、従来の普通借家契約と違い、貸主が契約期間を自由に決めることができる賃借契約です。
空き家を賃貸にして活用する方法は、以下のとおりになります。
- そのまま貸す
- 更地にして借地にする(駐車場など)
- 賃貸アパートを建てて運用する
更地にして借地にしたり、賃貸アパートを建てて運用したりするのは、素人には少し難易度が高いかもしれません。
売却する場合と同様とにかく一度、不動産業者に相談してみることをおすすめします。
空き家がマンションの場合は、そのまま貸すしかありませんので、下記の記事も合わせてご覧ください。
マンションを貸すコツ!費用・税金・注意点を分かりやすく解説します
この記事では、マンションを貸すコツや管理会社の決め方について紹介しています。ローン残債がある場合の手続きの進め方や賃貸に出すときの注意点について知っておくことでリスク管理ができ、マンション賃貸を成功させることができます。
確定申告で固定資産税を経費に算入できる
空き家を賃貸にすると、家賃収入に対して所得税を支払わなければいけなくなるのですが、確定申告で固定資産税を経費に算入して税負担を減らすことができます。
課税所得は、以下の計算式で算出します。
収入には、家賃だけでなく共益費や礼金なども含まれます。
経費には、固定資産税や都市計画税、損害保険料、管理会社に支払う管理費などが含まれます。
課税金額を減らすことができますので、経費にできるものは漏れなく入れてください。
管理人からの一言「空き家の固定資産税が6倍になる前に対処しよう」
空き家をそのまま放置してしまうと、固定資産税が6倍になるおそれがあります。
そうなる前に、何かしらの対策をおこないましょう。
すでに固定資産税が6倍になっている場合は、なおさら早く行動に移してください。
空き家問題は、時間が経てば経つほど深刻化していきます。
どうするべきか迷っている場合は、とりあえず役所や不動産業者に相談してみることが解決への第一歩になると思います。
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