マンション

結論から言いますと、不動産売買においてもクーリングオフ制度が適用されることが宅建業法で定められています。

ただし適用されるのは、売主が不動産会社である場合のみになります。

クーリングオフは、誇大広告や強引な勧誘で集客する悪徳業者などから消費者を守るためにできた制度だからです。

売主が個人であればお互いに素人ですので、買主だけを守るクーリングオフ制度は適用されません。

  • クーリングオフ制度が適用されるのは売主が宅地建物取引業者のとき
  • 買受申し込み場所によっては適用されないケースもある
  • クーリングオフ制度を利用したいなら8日以内に申し出る

クーリングオフ制度が利用できない場合の契約解除の方法についても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。

不動産売買でクーリングオフが適用されるのは売主が宅地建物取引業者である場合

不動産業者

繰り返しになりますが、クーリングオフが適用されるのは不動産の売主が宅地建物取引業を営む事業者であるときだけです。

宅地建物取引業を営む事業者と難しい言い方をしましたが、要するに不動産会社のことになります。

法人の場合はどうなのか気になる人もいると思いますが、宅地建物取引業をおこなっていなければ、事業者であっても不動産に精通していない一般消費者として扱われます。

また予備知識にはなりますが、不動産売買に精通している不動産会社は守られるべき一般消費者に含まれないため、クーリングオフ制度は適用されません。

つまりクーリングオフ制度が適用されるかどうかは、売主が宅地取引を本業にしているかどうかで判断できるということです。

売主が宅地取引に精通しない個人または法人なら適用除外!仲介業者の有無は関係ない

売主が個人であったり、宅地建物取引業をおこなっていない法人である場合、クーリングオフ制度は適用除外になります。

不動産会社が仲介して売買契約をおこなうケースであっても、取り扱いは同じです。

公益社団法人全日本不動産協会にもクーリングオフが適用される要件について、以下のように記載されています。

当事者については、業者自らが売主、業者以外の一般購入者が買主となる場合に、クーリングオフが適用されます。売主が業者ではない場合や、あるいは売主と買主のいずれも業者である場合には、適用はありません(78条2項)。

売主と買主の関係性別にクーリングオフ制度の適用の有無について、表にまとめましたので参考にしてください。

売主 買主 制度の適用
一般消費者 一般消費者 ×
一般消費者 不動産会社 ×
不動産会社 一般消費者
不動産会社 不動産会社 ×

ではクーリングオフ制度が適用されるケースについて、さらに掘り下げて解説していきます。

買受申込みおよび契約場所によっては解除できないケースもある

不動産売買契約書

売主が不動産会社で、買主が一般消費者というケースであっても、買い受け申し込みや契約締結時に買主が適切な判断ができる状況下にあったのであれば、クーリングオフ制度は適用されません。

クーリングオフの語源が「cooling off(頭を冷やす)」であるとおり、冷静になる必要があったと考えられる契約が対象になるからです。

具体的には、買受けの申し込みおよび契約締結の場所が不動産会社の事務所や案内所であった場合、クーリングオフの適用除外となります。

事務所や案内所に出向いて契約を交わしたということは、買主に買う気があったとみなされ、適用は認められません。

マンションのモデルルームなどの物件見学会は、案内所に該当します。

買受け申し込みや契約締結の場所 クーリングオフの適用
事務所および案内所 ×
喫茶店や自宅、勤務先など

ただし買主自らが希望した場合であれば、自宅や勤務先で買受け申し込みまたは契約締結をおこなったとしてもクーリングオフ制度は適用されませんので注意してください。

クーリングオフ制度が適用されるケースに該当し、申し出方法について知りたい人は「クーリングオフ制度を利用する方法(ページ内リンク)」を参考にしてください。

では、不動産会社と結ぶ媒介契約はクーリングオフ制度の対象になるのかについて解説していきます。

不動産会社と結ぶ媒介契約はいつでも解消できる

少し視点は変わりますが、不動産会社と締結した媒介契約にはクーリングオフはありません。

ただし媒介契約は契約期間内であっても解約できるというのが、基本的なルールとなっています。

そのため契約を解消したければ、ペナルティを課せられることなくいつでも解約できます。

なるべく解約されないために契約の解消について説明しない不動産会社も多いので、あまり知られていないかもしれませんね。

働きが悪かったり、他社に乗り換えたい場合は、遠慮なく不動産会社を変更しましょう。

媒介契約の解除について詳しく知りたい人は、以下の記事も合わせてご覧ください。

マンション売却で専任媒介契約を解除したい|契約期間中の解除はタブー?

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では、クーリングオフを申し出る方法について紹介していきます。

クーリングオフ制度を利用して不動産売買契約を解除する方法

マンション

クーリングオフ制度を利用する場合、宅建業者によって書面で制度の説明がおこなわれた日から8日を経過する前に申し出ます。

クーリングオフ制度について説明がなかった場合は8日間の起算日がないため、不動産流通推進センターの以下の記載からもわかるとおり、いつでも契約を解除することができます。

売主が、買主に対し所定のクーリングオフについての書面による告知をしなかったときは、買主は、その取引の決済・引渡しが済むまでは、いつでも売買契約を解除することができる(宅地建物取引業法第37条の2第1項第2号)。

一つ勘違いしてはいけないのが、不動産会社にクーリングオフについての説明義務はないという点です。

説明がなかったからといって悪徳業者というわけではないので、不信に思わないようにしましょう。

申し出方法は不動産会社宛てに書面で解約の通知を提出するだけでよく、売主側の了承はいりません。

内容証明郵便で郵送するのが最も適切ですが、はがきで代用することも可能です。

はがきで代用する場合は両面コピーして手元に残しておき、発信日が記録される特定記録郵便または簡易書留で送ってください。

契約日から発信日までが8日の期限内であれば契約は解除され、不動産会社はクーリングオフに伴う損害賠償や違約金などを請求することはできないルールになっています。

ただし物件の引き渡しや代金の支払いがおこなわれ、既に取引が完結している場合にはクーリングオフできませんので注意してください。

では適用期間の8日が過ぎた場合など、クーリングオフできないときの対処法についても紹介していきます。

8日経過後でも履行の着手前なら手付放棄で解除可能

手付放棄

売主が履行に着手する前であれば、買主は手付放棄することで契約を解除できます。

履行の着手というのは、契約の実行に向けて取り掛かっていると客観的に認められる場合のことで、売主が抵当権抹消登記をしたときなどが該当します。

手付放棄による契約解除は特別な理由がなくても認められてしまうので、申し出があった側は不本意かもしれませんが、初めから売買活動をやり直さなければなりません。

手付金の返還について詳しく知りたい人は、以下の記事も合わせてご覧ください。

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履行の着手後は、手付放棄による契約解除はできません。

履行の着手後なら違約金による契約解除になる

履行に着手した後に契約をキャンセルしたい場合、違約金を支払わなければなりません。

違約金の相場は、売買契約の1割程度です。

ただし契約解除の理由が一方的である場合、相手方は拒否することができるため、必ずしも違約金を支払えば白紙にできるわけではありません。

またどこからが履行の着手なのか、定義をめぐってトラブルに発展する可能性が高いことも念頭に置いて対応しましょう。

キャラ

最悪の場合、裁判までもつれ込む可能性さえあります。

管理人からの一言「まずは不動産会社に契約解除したい旨を伝えよう」

クーリングオフを利用できる人も、できない人もいたと思います。

どちらにしても契約を解除したい気持ちがあることは間違いないわけですから、すぐに不動産会社に相談するべきです。

早ければ早いほど解決策は多くなりますし、仮に契約を続行したとしても後悔が残ってしまうのではないでしょうか。

高額なお金が動く不動産売買では、一つの決断で結果が大きく変わります。

手遅れにならないうちに、不動産会社に相談しましょう。