マンションを生前贈与するにしても、相続するにしても税金はかかってきてしまいます。
だれしもマンションの譲渡時にかかる税金は、少なくしたいと考えますよね。
この記事では、「生前贈与と相続それぞれのメリット」から「生前贈与がトクするケース」、「相続がトクするケース」について解説していきます。
生前贈与と相続どちらが得?それぞれのメリットを比較
マンションの生前贈与と相続それぞれのメリットを挙げていきますので、どちらが良いか比較してみてください。
マンションを生前贈与するメリット
マンションを生前贈与するメリットは、以下のとおりです。
- マンションを譲渡する人を選べる
- 遺産分割協議でトラブルになるリスクをなくせる
- 住宅取得等資金の贈与税には非課税枠がある
譲渡する人を選べる
マンションを生前贈与する場合、贈与者(あげる人)が受贈者(もらう人)を選ぶことができます。
たとえば親から子へ贈与する場合で、子供が2人いたとします。
とてもしっかりしていて親思いな兄と、親不孝な問題児で家にも全然帰ってこない弟。
親は、弟よりも兄に家を継いでほしいと考えると思います。
しかし何も対策をとらずに相続が発生した場合、弟にもマンションをもらう権利がありますので、親が亡くなった途端に帰ってきてマンションが欲しいと主張するかもしれません。
あるいはマンションを売却して、お金で遺産分割しようと言い出すことも考えられます。
兄は当然、自分がマンションをもらえるものだと考えていたにもかかわらず、弟の主張によりマンションを相続できない可能性があるのです。
相続が発生してからでは打つ手がありませんが、あらかじめ親から兄へ生前贈与でマンションを譲渡しておけば、弟がマンションを欲しいと主張することはできなくなります。
遺産分割協議でトラブルになるリスクをなくせる
マンションは、遺産分割協議でトラブルになりやすい財産です。
なぜかというと、お金であれば相続人で平等に分けることができますが、マンションは割って分けることができないため、どうしても不平不満が出やすくなるからです。
相続人のだれかが住むのか、売却して現金化するのか、相続人同士で意見が食い違ってしまえば、関係にヒビが入るかもしれません。
マンションを生前贈与で譲渡しておけば、トラブルに発展するリスクを未然になくすことができます。
住宅取得等資金の贈与税には非課税枠がある
住宅取得等資金の贈与とは、父母や祖父母など直系尊属から贈与された資金でマンションを購入したり、改築したりすることをいい、これには非課税枠が設けられています。
非課税枠の非課税限度額は、以下のとおりです。
マンションの取得に係る契約の締結日 省エネ等住宅 左記以外の住宅 平成28年1月1日〜平成32年3月31日 1,200万円 700万円 平成32年4月1年〜平成33年3月31日 1,000万円 500万円 ※消費税率8%で購入した場合の限度額です。
省エネ等住宅とは、省エネ性や耐震性が基準に適合するマンションである、と書類にて証明されているマンションのことをいい、省エネ等住宅ではないマンションに比べて非課税枠が多く設けられています。
住宅取得等資金の贈与税の非課税枠を使って贈与された金額については、もちろん贈与者の相続財産には加算されません。
贈与税がかからずに相続税対策をすることができるので、使うとメリットが大きい特例ですね。
マンションを生前贈与する注意点
マンションを生前贈与するとマンションを受け取った人は特別受益者となるため、相続が発生したときに他の財産を受け取れない可能性がありますので、注意が必要です。
特別受益者となってしまう
マンションの生前贈与で注意しなければならないことは、マンションを生前贈与された人とそうでない人との公平性です。
相続人が複数いる場合には、マンションを贈与された人に対してほかの相続人から、どうしても不平不満がでてしまいます。
そのためマンションを特別に受け取った「特別受益者」として、マンションの贈与を考慮した相続分の調整がおこなわれることになります。
マンションを相続するメリット
マンションを相続するメリットは、以下の3つです。
- 基礎控除額におさまれば相続税はかからない
- 小規模宅地等の特例が使える
- 相続したときの評価額で課税される
基礎控除額におさまれば相続税はかからない
生前贈与の場合は110万円を超えたら贈与税がかかってきますが、相続時には基礎控除額などがあり、差し引いてから課税されます。
相続時の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっており、この範囲内にマンションを含むすべての相続財産がおさまれば、相続税を払わずにマンションを譲渡できます。
基礎控除の具体例について、マンション売却コンシェルジュのホームーページに記載されていましたので参考にしてください。
なお、相続税の基礎控除は「3,000万円+(600万円×相続人の人数)」の計算式を使用。
たとえば、親の遺産を2人で相続した場合「4,200万円」まで相続税はかかりません。
小規模宅地等の特例が使える
小規模宅地等の特例とはマンションの土地評価を80%削減できる制度で、配偶者や生計をともにしている親族、別居しているがマイホームを持たない親族が相続する場合に利用できます。
マンションの土地評価が3,000万円の場合でも、600万円として相続財産に加えることができるので、相続税をかなり節税することができます。
相続したときの評価額で課税される
マンションの価値は購入から時間が経つにつれて、だんだん下がっていくのが一般的です。
早い時期に高額な贈与税を支払って贈与したにもかかわらず、相続時には相続財産として全く価値がなくなっていて、相続だったら税金を支払う必要がなかった、ということが起こる可能性があります。
全く価値がなくなっていたというのはあくまでもマンションの評価額であり、住むには十分な場合がほとんどですので、急いで名義を移す必要がなければ生前贈与しなくても良いと思います。
マンションを相続する注意点
相続が発生するまで何の対策もしなかった場合、マンションは遺産分割協議でもめる要因になります。
遺産分割協議でモメる可能性がある
マンションは、遺産分割協議でモメる原因になりやすい財産です。
お金であれば相続人で平等に分配できるのでトラブルになりにくいのですが、分けるのがマンションの場合はそんなに簡単ではありません。
相続する財産がマンションだけになるから相続税はかからない、と考えているとしたら大変危険です。
生前贈与のほうが節税効果が高いケース
相続よりも生前贈与のほうが、節税効果が高くなるケースを紹介します。
以下のケースであれば節税、かつ早い段階でマンションを譲渡することができるので、生前贈与を選択するのが良いと思います。
- 新しいマンションを購入する場合
- 相続時精算課税を使ってトクする場合
新しいマンションを購入する場合
新しいマンションを購入する場合には、住宅取得等資金の非課税を使うことができます。
贈与者の親と同居する場合にも適用されるので、マンションを子の名義にして購入すれば住宅取得等資金の非課税枠を使って、贈与税を抑えながら相続税対策をすることもできます。
マンションの購入資金すべてをこの特例でまかなおうと思うと難しいですが、非課税枠分はマンションの頭金に使用して、残りは子がローンで支払っていくことにすれば、贈与税がかかることなくマンションを購入できます。
さらに歴年課税制度を使って毎年110万円ずつ贈与をおこない、その中でローンを支払っていけばかなりの節税効果が望めます。
相続時精算課税を利用するメリットがある場合
相続時精算課税とは、親子間などの生前贈与の場合に2,500万円まで非課税となる制度のことです。
相続時精算課税制度を使って贈与したマンションは、相続時に贈与者の財産に戻して相続税を算出することになるので、相続税対策にはなりません。
しかし相続時に親の資産に戻しても相続税がかからないケースであれば、相続時精算課税制度を利用して贈与税も相続税もかかることなく、マンションの権利を移すことができます。
生前贈与時の税金について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
この記事ではマンションを生前贈与したときに贈与税などの税金はいくらかかるのか紹介しています。住宅の名義を孫や子供に変更するときに利用できる非課税制度の注意点について知っておかないと、生前贈与したことを後悔する可能性があります。
相続のほうが節税効果が高いケース
節税のためにおこなったはずの生前贈与が、裏目に出ることがあります。
生前贈与よりも相続のほうが節税効果が高くなるケースは、以下のとおりです。
- 遺産総額が基礎控除額におさまる場合
- マンションの価値が下がっている場合
遺産総額が基礎控除額におさまる場合
遺産総額が基礎控除額におさまれば、相続税は一切かかりません。
財産がたくさんあって相続税が高額になる場合には、贈与税を払ってでも生前贈与したほうがいいケースもありますが、相続税がかかる心配がなければ贈与せずに相続まで待ったほうが税金面ではトクといえます。
マンションの価値が下がっている場合
マンションを生前贈与するということは、相続時まで待つよりも比較的マンションの価値が高いときに譲渡することになり、もちろん税金も高くなってしまいます。
今後マンションの価値が上がる可能性がないのであれば、相続時まで待ったほうが税金は抑えられます。
相続時の税金について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
マンションを相続した場合の相続税はいくら?計算方法と控除について
親のマンションを相続したときの相続税はいくら?この記事ではマンションの評価額の調べ方と固定資産税を用いた相続税の計算方法、受けられる控除について説明しています。
管理人からの一言「生前贈与と相続どちらが得かはケースバイケース」
生前贈与と相続のどちらが適しているのかはケースバイケースですので、一概にどちらがトクであるとは言えません。
親から子へマンションを譲渡するケースが多いと思いますが、親の希望や子の人数、マンションの所在地、財産の多い少ないなどで、どちらを選択したほうがいいのか変わってきます。
今回この記事を読んでいただいた人は、まだ選択することができる人だと思いますので、ぜひ親子で話し合う時間を作ってください。
遺産分割協議に親は参加することができません。
親は自分が残したマンションで子が争ったり相続税で子に負担を与えたりしないために、子は親が残してくれたマンションを親が望まない形で手放すことにならないために、この機会にしっかりとマンションの行く末を決めてください。
またトラブルの種であるマンションをあらかじめ売却して、現金化しておくという方法もあります。
現金化しておけば遺産分割協議で揉めることなく、遺産の分配がスムーズにいくため、相続が発生する前に売却するという人も少なくありません。
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