「年金受給者が不動産売却すると支給額が減額される」という話しを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

自宅を売却して老人ホームや子供と一緒に暮らすことを考えている人にとって、年金受給額が減額されるのは大問題です。

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この記事では、「不動産売却によって年金支給額が減額されるのは本当なのか」から「年金生活者が不動産売却するときの注意点」「確定申告は必要か」について解説していきますので参考にしてください。

年金受給者が不動産売却すると支給額が減額されるって本当?

年金受給者が不動産売却の画像

結論から言いますと、年金受給者が不動産を売却して利益を得たとしても、年金支給額が減額されることはありませんので安心してください。

年金には国民年金や厚生年金、共済年金、企業年金などがありますが、これらの支給額は現役のときに保険料をいくら支払ったかによって決まります。

前年の所得によって、支給額が変動するものではないということです。

所得によって減額される可能性がある在職老齢年金を受け取っている人についても、不動産売却によって生じた利益は判定基準に含まれないため、年金受給額が減額されることはありません。

年金生活者が土地や建物などの不動産を売るときの注意点

年金生活者不動産を売るときの注意点

年金生活者が土地や建物などの不動産を売って利益を得たとしても年金受給額への影響はない、というのが基本です。

ただし障害年金を受け取っている人や、75歳以上の後期高齢者の人が不動産を売るときには、以下の点に注意しなければなりません。

  • 障害年金は一時所得によって支給停止になる可能性がある
  • 後期高齢者は国民健康保険料が値上げされる

それぞれ詳しく解説していきます。

障害年金は一時所得によって支給停止になる可能性がある

障害年金を受け取っている人は、不動産売却によって生じた一時所得によって年金が減額あるいは支給停止になる可能性があります。

不動産売却によって障害年金が支給停止されるケースについては、日本年金機構の下記の記述を参考にしてください。

20歳前に傷病を負った人の障害基礎年金については、本人が保険料を納付していないことから、所得制限が設けられており、所得額が398万4干円(2人世帯)を超える場合には年金額の2分の1相当額に限り支給停止とし、500万1干円を超える場合には全額支給停止とする二段階制がとられています。

障害年金を20歳になる前から受け取っている人は、不動産売却によって所得が生じると年金が減額あるいは支給停止されるかもしれないということです。

後期高齢者は国民健康保険料が値上げされる

75歳以上の後期高齢者が不動産売却した場合、国民健康保険料が値上げされてしまうという注意点があります。

なぜ値上げされてしまうのかというと、後期高齢者の国民健康保険料は、前年の所得によって金額が決まるからです。

国民健康保険料は年金から天引きされるため、いくら支払っているのか把握している人は少ないと思います。

そのため受け取る年金が減っていた場合、不動産売却によって年金受給額が減らされたと勘違いしてしまう人もいますが、実際は国民健康保険料が値上げされたことによって手元に入る年金が減ったということになります。

いくら値上げされるのか気になる人も多いと思いますが、後期高齢者が支払う国民健康保険料は自治体によって異なるため、具体的な金額については各自治体のホームページで確認するか、市役所に問い合わせてください。

年金受給者でも譲渡所得税と住民税はかかる

年金受給者でも譲渡所得税と住民税はかかる

年金受給者であっても、不動産売却で得た利益に対して譲渡所得税と住民税が課税されます。

特別に免除されるということはありませんので、いくら税金を支払わなければならないのか事前に確認しておきましょう。

不動産を売却する人は必ず知っておきたい、譲渡所得税と住民税を節約できる「3,000万円の特別控除」についても紹介しますので参考にしてください。

マンション売却時にかかる税金については、下記の記事でも詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

マンション売却でかかる税金はいくら?【計算方法と減価償却について】

マンション売却でかかる税金はいくらなのか、計算方法をわかりやすく解説しています。減価償却のやり方から具体的なシミュレーション例、知っておかないと損をする税制優遇についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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不動産を売って生じた利益にかかる譲渡所得税の計算方法

不動産を売ったことによって生じた利益(譲渡所得)に対して課税される譲渡所得税は、以下の計算式で求めます。

譲渡収入-(取得費+譲渡費用)×税率
譲渡収入 買主から受け取った売却代金
取得費 不動産の購入金額(建物部分は減価償却したもの)
譲渡費用 売却にかかった費用
税率 15.315%(復興特別所得税を含む)

たとえば所有期間5年超のマンションの譲渡収入が3,000万円、取得費が1,500万円、譲渡費用が200万円であった場合の譲渡所得税は以下のとおりです。

譲渡収入3,000万円-(取得費1,500万円+譲渡費用200万円)×税率15.315%=譲渡所得税199万円

もしも不動産を購入してから年数が経ちすぎて取得費がわからない場合は、概算取得費の「売却代金×5%」を計算式に当てはめます。

また所有期間が5年以下の場合は、30.63%の税率で計算してください。

譲渡所得税は確定申告をした後に一括で支払うことになりますので、売却代金から譲渡所得税分を差し引き、使わずに取っておかなければなりません。

不動産を売って利益が生じたら翌年の住民税が上がる

不動産を売ったことによって利益が生じた場合、翌年の住民税が上がります。

住民税の計算式は譲渡所得税と同様「譲渡収入-(取得費+譲渡費用)×税率」で、税率が異なります。

住民税の税率は、所有期間が5年超の場合5%、5年以下の場合9%です。

譲渡所得税のときと同じ例を用いて、住民税を計算してみます。

譲渡収入3,000万円-(取得費1,500万円+譲渡費用200万円)×税率5%=住民税65万円

不動産を売却した翌年の住民税が、65万円増えるということです。

3,000万円の特別控除を利用すれば譲渡所得税と住民税を節約できる

譲渡所得税と住民税の計算方法について解説しましたが、3,000万円の特別控除の適用を受ければ、利益をなかったことにできる可能性があります。

3,000万円の特別控除とは、譲渡所得を最大3,000万円までなかったことにしてくれる特例です。

不動産売却で3,000万円の利益が生じるケースはあまりないため、ほとんどの人は譲渡所得を全てなかったことにできます。

利益をなかったことにできれば、当然、譲渡所得税と住民税は課税されません。

3,000万円の特別控除の特例について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。

3,000万円特別控除の条件や必要書類について初心者にもわかりやすく解説

3,000万円特別控除を初心者にもわかりやすく解説しています。適用条件や確定申告の必要書類、相続した住宅や空き家の場合はどうなるのかについても詳しく紹介していますので参考にしてください。ただし住宅ローン控除のほうがお得になるケースもありますので注意が必要です。

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不動産売却で譲渡所得が生じたら年金受給者でも確定申告が必要

不動産を売却したら確定申告が必要

不動産売却で譲渡所得が生じたら、年金受給者であっても確定申告をおこなう必要があります。

収入が年金のみの場合、確定申告をおこなう習慣がないと思いますが、売却した翌年の2月16日から3月15日の間に忘れずにおこなってください。

また譲渡所得税については確定申告後に全額支払うことになりますので、そちらも忘れずに納付しましょう。

申告期限までに譲渡所得税を納めないと、納付するまでの日数分の延滞税を支払わなければならなくなります。

3,000万円の特別控除の適用を受けるためにも確定申告は必須になりますので、必ずおこなってください。

確定申告を忘れてしまうと、最悪の場合、3,000万円の特別控除の適用を受けられず、高額な譲渡税が課せられるうえに、延滞税まで加算されるという状況になってしまいます。

年が明けたら準備を始めるつもりで、早めに行動して確実に確定申告できるようにしておくことをおすすめします。

確定申告に必要な書類や申告方法などについては、下記の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。

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管理人からの一言「年金が減額されることはないが税金には注意が必要」

不動産売却によって所得が発生したとしても、年金が減額される心配はありません。

ただし譲渡所得税などの税金に関しては、年金受給者だとしても免除されることはなく、納税義務がありますので注意してください。

イエウールで一括査定したら310万も高くなった

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