相続で困ることのひとつに、親が住んでいたマンションをどうするのかという問題があります。
お金なら相続人で分けて終わりですが、不動産となるとそうはいきません。
相続人が住むのか、あるいは売却してお金に換えて分けるのか、簡単には解決しないケースも多く、マンションを放置してしまう人も少なくありません。
しかしマンションを放置してしまうことは、問題を後回しにしているだけにすぎず、より深刻な事態に発展するリスクがあります。
この記事では、「放置せずに売るべき理由」から「マンションを相続したときの対処法」、「相続したマンションを売却する流れ」について紹介していきます。
相続したマンションは放置せずに売るべき
まだどうするか決められないからと相続したマンションを放置することは、問題を先送りにするだけです。
そればかりか放置したことにより、さらに問題が深刻になる可能性があります。
相続したマンションを放置してはいけない理由は、以下のとおりです。
家の劣化が早くなる
だれも住んでいないと、家は一気に劣化してしまいます。
換気をおこなわないと湿気がこもって木製部分が痛んでしまったり、虫が侵入して住みかにされてしまったりします。
そうならないためには定期的に家にいって換気や掃除をする必要がありますが、仕事をしていたり遠方だったりすると、なかなか難しいのが現実です。
所有している間は維持費がかかる
だれも住んでいなくても、マンションの管理費や修繕積立費、固定資産税を支払い続けなければなりません。
また水道や電気は一見すると必要ないように思われるかもしれませんが、解約しないで使えるようにしておいたほうが良く、光熱費が別途かかります。
なぜ解約しないほうが良いのかというと、排水管をしばらく使わないでいるとサビてボロボロになってしまいますし、水がでないとメンテナンスにいったときにトイレや手を洗うのに困ります。
電気も水道と同様に使えないと不便ですし、売却することになったときに設備の作動チェックができない等の不都合が考えられます。
家を維持するだけでも費用がかかりますので、放置することは賢明ではありません。
マンションの価値がなくなってからでは売却できない
一般的にマンションの価値はどんどん下がっていきます。
親が長年住んでいたうえに、放置したことで家の老朽化を早めれば、ますます売れない物件となってしまいます。
マンションの売却は相続が発生したときに、すぐにおこなうのがベターです。
マンションを相続したときの対処法
実際にマンションを相続したとき、どのような対処をしたらいいのでしょうか。
対応方法は、以下の2つです。
- 相続人が住む
- 売却してお金に換える
それぞれの良い点、悪い点を挙げていきますので、参考にしてください。
対処法1.相続人が住む
相続したマンションに相続人が住んだ場合の、メリットとデメリットは以下のとおりです。
- 相続したマンションに相続人が住んだ場合のメリット
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- 家を手放さなくて済む
- 売却する手間がない
家を手放さなくて済む
親が亡くなったからといって、住んでいた家をすぐに売却するのは気が引けますよね。
自分が住んでいたことがある家であれば愛着もありますし、実家という存在がなくなるのは寂しい気持ちになります。
売却してしまえば他人の物になってしまいますが、相続人のだれかが住めば実家を手放さなくても良いという利点があります。
売却する手間がかからない
マンション売却には、どうしても時間と労力が必要になります。
住み続けるなら売却する手間がないので、忙しい中でだれが売却の手続き等をやるのか、と揉める心配がありません。
- 相続したマンションに相続人が住んだ場合のデメリット
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- 住みたい人が他にもいると円滑にいかない
- 現金で分けることを希望する相続人がいたら言い争いになる
- 家族間で揉める
- 遺産分割で現金が必要になる
住みたい人が他にもいると円滑にいかない
「地元に戻りたいな」と考えていたり、実家のマンションの立地や間取りが魅力的で住み替えたいと考えていたりするかもしれません。
しかし、そう考えているのは自分だけとは限りません。住みたいと考える人が他にもいれば、だれが住むのかで揉めることになるでしょう。
現金で分けることを希望する相続人がいたら言い争いになる
相続したマンションに住むことを希望する人がいる一方、現金化して平等に分けるべきだと主張する人がいれば、言い争いになる可能性があります。
その場合に、相手を納得させるだけの条件を出すことができればいいのですが、できなければ住むのは難しいかもしれません。
家族間で揉める
配偶者や子供がいる場合、住居の変更は自分だけの問題ではありません。
仕事を辞めなければいけなかったり、子供に転校させる必要があったりすれば、簡単に引っ越しを決めることはできないでしょう。
相続したマンションに住むことに対して家族全員の理解が得られなければ、諦めなければなりません。
遺産分割で現金が必要になる
親が残した財産がマンションだけだった場合、どのように遺産分割するのか問題になります。
たとえば相続人が2人で、遺産が2,000万円のマンションだけだったとします。
相続人の2人には半分ずつもらう権利がありますが、マンションを二つに割って分けることはできません。
そのためマンションをもらう側は、もらわない側にお金を渡して清算することになります。
遺産分割については、下記の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
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対処法2.相続したマンションを売却する
相続したマンションを売却する場合の、メリットとデメリットは以下のとおりです。
- 相続したマンションを売却する場合のメリット
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- 相続税の支払いにあてることができる
- 平等に遺産分割できる
相続税の支払いにあてることができる
マンションを売却して現金化すれば、相続税の支払いに充てることができます。
相続税は相続発生から10ヶ月以内に納めなければならず、捻出するのに苦労する人も少なくありません。
親の資産がマンションしかない場合には、相続人の預貯金などから相続税を支払わなければならないため、せっかく貯めていた預金が減ることになります。
マンションを売却して現金化しておけば、預貯金を減らすことなく相続税の支払いを済ませられます。
相続税については、下記の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
マンションを相続した場合の相続税はいくら?計算方法と控除について
親のマンションを相続したときの相続税はいくら?この記事ではマンションの評価額の調べ方と固定資産税を用いた相続税の計算方法、受けられる控除について説明しています。
平等に遺産分割できる
マンションを2つに割って分けることはできませんが、売却してお金に換えれば平等に分けられます。
マンションを現金化してお金で分ければ、親族間での争いが起きにくくなるということです。
ただし相続したマンションが遠方にある場合、通常の売却方法と異なる点があるため注意が必要です。
相続したマンションが遠方にあるという人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
遠方にある不動産を売却する方法とスムーズに売るための手続きの流れ
遠方にある不動産を売却したい場合、どうすれば良いのでしょうか。この記事では、遠方にある不動産の売却方法とスムーズに売るための手続きの流れ、注意点について解説しています。現地にいくのが難しくても、高く売ることを諦めてはいけません。
- 相続したマンションを売却する場合のデメリット
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- マンションを手放さなければいけない
- 親戚に反対される
- 近所の目が気になる
- 譲渡所得税がかかる可能性がある
- 売却価格が納得のいく金額になるとは限らない
マンションを手放さなければいけない
売却して実家がなくなってしまうことに、寂しい気持ちになる人もいるのではないでしょうか。
住む予定がないのであれば持っていても手間や費用がかかるだけなのですが、思い出のある家が他人の手に渡ってしまうことは受け入れがたいと思います。
親戚に反対される
実家を売ってしまうなんて、と親戚に反対される可能性があります。
なるべく親族間で争いたくないと思いますが、実家をどうするかという問題は解決までに時間がかかる傾向にあります。
遺産分割協議で売却を反対する人がいれば、説得しなければマンションを売却することはできません。
近所の目が気になる
相続したマンションをすぐに売却することに、近所の人から薄情だと思われるかもしれません。
不本意だとは思いますが、そのような意見が出るのは仕方ありません。
周りの目が気になってしまう気持ちもわかりますが、売却すると決めたらしっかりやり遂げる強い意志が必要です。
譲渡所得税がかかる可能性がある
マンションを売却したことによって、譲渡税がかかってしまう可能性があります。
譲渡所得税とは、不動産を売却したことにより得たお金に対して課税される税金で、「譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算されます。
売却価格が納得のいく金額になるとは限らない
売却価格が納得のいく金額になるとは限らず、思ったよりも安値で取引されてしまう可能性があります。
相続で受け取ったマンションの場合、売却した本人だけの問題ではありません。
他の相続人に「もっと高く売れたのではないのだろうか」とモヤモヤを残すことになれば、関係にヒビが入ることも大いに考えられます。
高値売却できた場合に怒る人はいませんが、逆の場合には注意が必要です。
相続したマンションを売却する流れ
相続したマンションを売却する流れは、以下のとおりです。
遺産分割協議で相続人を決める
遺産分割協議で、相続人を代表してマンションを売却する人を決めます。
相続人の中に一人でも売却に反対する人がいると、マンションを売却することができません。
売却したほうが良い理由を明確に示せるよう準備して、スムーズに話し合いを進められるようにしておきましょう。
不動産会社に相談する
遺産分割協議で選ばれた代表者は、売却を依頼する不動産会社を探します。
マンション売却が成功するかどうかは、依頼する不動産会社で決まるといっても過言ではありませんので、慎重に不動産会社を吟味する必要があります。
高く売ることを第一優先事項にして、売却活動に挑みましょう。
マンションの名義を相続人に変更する(相続登記)
買主が見つかる前に、マンションの名義を遺産分割協議で決めた代表者に変更しておきます。
あらかじめ名義変更しておかないと、買主と売買契約を結べませんので注意してください。
相続登記は自分でおこなうこともできますが、専門的な知識が必要になる複雑な手続きであるため、司法書士に依頼するのが一般的です。
マンションの相続登記について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
相続したマンションの名義変更を自分で法務局にいってやる方法を紹介しています。必要書類や費用、相続税などの税金、登記変更手続きを司法書士に依頼するケースについても解説していますので参考にしてください。マンションを相続したときに、何を優先させるべきかがわかります。
売買代金を相続人で分配する
買主が見つかり、マンションを売却することができたら、売買代金を相続人で分配します。
売却するのにかかった費用や譲渡所得税などは、あらかじめ差し引いてから分けないと代表者が損をしてしまいます。
確定申告をする
マンションを売却した翌年の2月16日から3月15日の間に、確定申告をします。
相続したマンションを売却したときは、「空き家にかかわる譲渡所得の特別控除の特例」によって最高3,000万円の控除が受けられます。
確定申告時に特例適用の申請するのを忘れると控除が受けられず、多額の税金がかかりますので注意しましょう。
相続したマンションの売却にかかる税金と受けられる特例について詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
相続したマンションの売却にかかる税金と受けられる特例について解説
相続したマンションの売却にかかる税金と受けられる特例を紹介しています。相続不動産を換価分割や相続税の納税資金の確保のために売る人も多いと思いますが、最低限、特別控除や取得費が分からない場合の対処法について把握しておかないと大きな損をする可能性があります。
マンションを相続したときの相談先は不動産会社がベスト
マンションを相続したときの相談先は、不動産会社がベストです。
なぜなら、不動産会社はマンション売却時に売主が関わるいろいろな業者の中間地点にいるからです。
登記手続きを依頼する司法書士や遺品整理業者、物件調査の業者など、売主自身で探すのは大変ですが、不動産会社はすべての業者と繋がりがあるため、紹介してもらうことができます。
また不動産会社に相談すれば相続したマンションを売るときに最も気になる、物件の査定額を出してもらうことも可能です。
いちいち業者を分けて探すのは手間がかかりますので、一括して紹介してもらえる不動産会社に相談するのが効率的でしょう。
売却が決まっていなくても不動産会社を窓口にする
相続したマンションをどうするか決まっていなくても、不動産会社を窓口にして手続きを進めるとスムーズです。
遺産分割協議がまとまらない場合は、不動産会社に売却見積もりを出してもらって話し合いの材料にしたり、司法書士を紹介してもらって遺産分割協議をまとめてもらったりできます。
総合的にアドバイスしてもらえる不動産会社が、マンションを相続したときの相談先として最も適切でしょう。
不動産会社は一括査定サイトで探す
マンションを相続したときに相談する不動産会社は、一括査定サイトで探すことをおすすめします。
不動産会社には得意不得意があるため、どの不動産会社も相続案件に詳しいとは限りません。
相続によるマンション売却では、税金や法律の知識が豊富にある不動産会社でないと的確なアドバイスをしてもらうことができないため、複数の不動産会社に話しを聞く必要があります。
複数の不動産会社から話しを聞くためには、同時に査定依頼できる一括査定サイトが最適です。
おすすめの不動産一括査定サイトについて、下記の記事で紹介していますので参考にしてください。
不動産一括査定サイト大手12社を徹底比較!おすすめサイトから選び方まで解説
不動産一括査定サイトを利用すれば、物件がいくらで売却できるか効率的に調べられるだけでなく、質の良い不動産会社にも出会えます。できるだけ好条件で売るためには、サイト選びが重要。不動産のプロである管理人が、おすすめのサイトと選び方のポイントを解説していきます。
管理人から一言「相続したマンションは売却したほうが良い」
相続したマンションに住むにしても、売却するにしても、相続人全員の同意を得ることが前提になります。
いわゆる遺産分割協議というものなのですが、この遺産分割協議で揉めてしまい、兄弟の縁が切れるなんてことも本当にあるのです。
話し合いがこじれないためには、相手がどんな考えを持っているのかを見通しておきましょう。
いろいろな意見が出る可能性を考えておくことで、「自分と意見が違うなんて」と感情的になることもなくなります。
あらかじめ相続人が住むことと売却すること、それぞれのメリットとデメリットを理解して、話し合いに挑みましょう。
ただし遺産分割協議をスムーズに進めるコツは、売却してマンションを現金化することです。
いつまでも問題の種を残しておくことは、賢明な判断ではありません。
現金化して平等に分配することで、相続したマンションの問題を円満に解決できます。
マンションを売却する詳しい手順については、下記の記事で注意点と合わせて紹介していますので参考にしてください。
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