すでに不動産を売る相手が決まっている、もしくはインターネットで買主を探そうと思っている人へ。
不動産の個人売買は、不動産会社へ支払う仲介手数料を節約できるメリットがある一方で、トラブルに発展するリスクが高いので注意してください。
よくあるトラブルとしては、買主が住宅ローンに通らなかったり、後から言った言わないの口論になったりするケースです。
- 売買契約書などの権利関係を曖昧にしてはいけない
- 住宅ローンを利用するなら専門家を仲介する必要がある
- トラブルを回避したいなら不動産会社に仲介してもらうのが一番
後から思わぬトラブルを発生させないためのポイントをまとめてありますので、ぜひ参考にしてください。
個人売買と仲介売買の違いは?それぞれのメリットとデメリット
個人売買は、不動産会社を通さずに売主と買主が直接やり取りをおこなう売買方法です。
不動産会社を通さないため、仲介手数料は発生しません。
個人売買の場合
一方で通常の不動産取引では、不動産会社が間に入って手続きを進めてくれます。
仲介売買の場合
不動産会社に対して仲介手数料を支払わなければなりませんが、リスク管理をしてもらえたり、以下のようなトラブルがあったときに対応してもらえます。
不動産会社に仲介してもらうことで回避できるトラブル
- 告知漏れによるトラブル
- 瑕疵の範囲があいまいなことによるトラブル
- 書類の不備によるトラブル
- 売買取引にかかる費用分担によるトラブル
- 重要事項説明書がないことによるトラブル
不動産会社に仲介してもらうのは、買主を探してもらうためだけでなく、トラブルを回避するためでもあるということです。
不動産の知識がない素人が、不動産取引を完璧におこなうのは非常に難しいです。
仲介手数料を節約するためだけにリスクのある取引方法をおこなうのは、賢明ではありません。
売主自身で買主を見つける場合、仲介手数料を割引してもらえる可能性がありますので、一度相談してみることをおすすめします。
不動産一括査定サイトを利用すれば、不動産会社に無料で売買取引の相談をすることができます。
契約の手続きだけを依頼した場合、いくらでやってもらえるか聞いてみましょう。
物件を査定してもらうこともできるので、売却価格の適正金額が明確になるメリットもあります。
イエウールの簡単一括査定なら、利用したからといって不動産会社を仲介しなければいけない制限がないため使いやすいですよ。
リスクはあるけど仲介手数料を節約できるのがセルフ売却
自分ですべての手続きをおこなった場合、いくら節約できるのか気になる人もいると思います。
不動産会社に支払う手数料は売却価格×3%+6万円なので、節約できる金額は以下のとおり。
売却価格 | 節約できる仲介手数料 |
---|---|
1,000万円 | 396,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 | 6,000万円 | 2,046,000円 |
買主も同じ金額の仲介手数料を支払わなければならないため、合計で上記の2倍の金額を節約できることになります。
では、トラブルが付きものの個人売買をどうすれば成功させることができるのか、気になりますよね。
リスク管理をしっかりおこなうことに留意すれば、仲介手数料を節約して個人間で取引することも可能です。
どんな点に注意すればいいのか解説していきます。
不動産を個人売買するときに気をつけるべき4つの注意点
不動産の専門家を間に入れない個人間売買では、本来取り決めるべき事項をスルーしていたり、将来起こり得る事態が予測できず、トラブルになってしまうことがあります。
個人売買をおこなうのであれば、以下の注意点に気をつけましょう。
- 売買契約書は必ず作成する
- 売却金額は相場をもとに決める
- 買主が住宅ローンの審査に通らなかったときの対策を知っておく
- サイトや掲示板で買い手を探さない
それぞれ詳しく解説していきますので、参考にしてください。
売買契約書を作成しておかないと言った言わないのトラブルに発展する
売買契約書は、売主と買主の合意を書面にしたものです。
不動産売買契約は契約書がなくても成立するため、個人間売買だと作成しない人も多いのですが、トラブルを避けるために必ず作成しましょう。
例えば、瑕疵担保責任の範囲について明確に取り決めなかった場合、後から瑕疵が発見されたときにどちらの責任になるのかをめぐって揉めてしまいます。
また信頼できる人だと思っていても、お金が絡むとどうなるか分かりません。
信用してお金を貸したのに返ってこない、というよくある話と同じです。
契約書を作成して文書に残しておかないと、言った言わないのトラブルに発展してしまうということです。
言った言わないのトラブルになってしまうのは、売買取引をおこなった当人同士だけではありません。
家族や親戚などを巻き込んでしまう可能性もあるため、当人同士が良くても、必ず契約書を作成することが大切です。
売買契約書の作成と同様に、売買金額の決め方にも注意しなければなりません。
売却金額は相場をもとに決めないと思わぬ落とし穴にはまる
個人売買の場合、売却金額をおおまかに決めてしまう傾向にあります。
知り合いだから、親戚だから、という理由で安めに設定する人も多いのですが、売却金額は相場をもとに決めないとトラブルになる可能性があるので注意が必要です。
トラブル事例を2つ紹介しますので、参考にしてください。
トラブル事例1.適正価格を見誤って関係に亀裂が入る
仮に、「3,500万円で買ったけど、2,000万円でいいよ」と言って売却したとします。
しかし安く見積もったつもりでも実際には相場より高く、買主から「安くないじゃないか」と言われてしまう可能性があります。
気を使って言わない人もいるかもしれませんが、心にしこりを残してしまえば関係は悪くなるでしょう。
また売主本人は安く売却することに納得していたとしても、家族などに「なんでそんなに安く売ったんだ」と、抗議されるかもしれません。
売主本人も、もっと高く売却しておけば良かったと後悔しないとは言い切れませんよね。
トラブル事例2.贈与税がかかる可能性がある
相場より安すぎる価格設定をすると、贈与のための所有権移転登記とみなされ、購入者に贈与税が課せられます。
親族間・親子間・兄弟間で不動産売買する場合は、相続税逃れだと思われてしまう可能性もあるでしょう。
身内だからと安く売却したにもかかわらず、贈与税が課せられてしまえば意味がないですよね。
売買価格は、必ず相場をもとに決めるようにしましょう。
上述でも紹介したイエウールの簡単一括査定なら、値段が知りたいだけでも利用できます。
利用者にイエウールを使った理由をアンケート調査した以下の結果からも、すぐに売却するつもりではない人が多いことがわかります。
イエウールを使った理由アンケート結果
住宅ローンの審査には重要事項説明書が必要になる
買主が預金ではなく、住宅ローンを組んで物件を購入する場合は、不動産会社に書類作成を依頼する必要があります。
住宅ローンの審査には、重要事項説明書の提出が求められるからです。
重要事項説明書は、売買契約における重要事項を取りまとめた書類で、宅地建物取引士の資格を持つ人しか作成できません。
個人間取引のサポートをおこなっている不動産会社を探して、作成してもらってください。
また個人が所有権移転登記の手続きをおこなう場合、銀行が融資に消極的になる可能性があります。
司法書士に所有権移転登記を依頼しないと融資してもらえないことも
銀行は、売主または買主が登記手続きをおこなうことを嫌います。
万が一登記手続きが遂行されなかった場合、抵当権を設定することができず、融資を持ち逃げされてしまうおそれがあるからです。
買主が銀行から融資を断られれば、売買取引が進まず、売主にとっても不都合ですよね。
登記手続きについては、司法書士に依頼する必要がでてくることを視野にいれておきましょう。
所有権移転登記にかかる費用は買主が支払うのが一般的ですが、特にルールがあるわけではありません。
手続きがスムーズに進められるように、折半などの配慮をすると良いかもしれません。
所有権移転登記にかかる費用は、登録免許税として支払う固定資産税評価額×2.0%と、司法書士に支払う報酬おおよそ5万円〜10万円です。
1,000万円の物件であれば、約25〜30万円が目安になります。
買主が住宅ローンに通らなかった場合の対処法について、まとめておきます。
- 宅地建物取引士に重要事項説明書を作成してもらう
- 司法書士に登記手続きをしてもらう
サイトや掲示板で買い手を探すのは危ない
インターネットの普及により、サイトや掲示板を使って、一から買い手を探すこともできます。
しかしサイトや掲示板で買い手を探すということは、赤の他人と大きな契約を結ぶということです。
権利関係が複雑で高額な不動産を、インターネットを通じて知り合った赤の他人と、専門家を通さずに売買するのは危険が大きいということは言うまでもありません。
土地や家屋を個人売買するときの手続きの流れ
不動産を個人売買するときの注意点を踏まえたうえで、取引の手順を確認しましょう。
通常の売買取引であれば不動産会社が順番に手続きを進めてくれますが、個人売買の場合はすべて自分たちで進めていかなければなりません。
中古住宅を売買するときの手続きの流れは、以下のとおりです。
- 権利関係を明確にする
- 売却代金を決める
- 買主に内覧してもらう
- 条件交渉をおこなう
- 必要書類を揃える
- 重要事項説明書を宅地建物取引士に作成してもらう
- 売買契約書を作成する
- 売買契約を締結する
- 物件の引き渡し・決済
- 司法書士に登記手続きをおこなってもらう
一つずつ解説していきますので、参考にしてください。
権利関係を明確にする
まずは、売却する不動産の権利関係を明確にします。
所有者は誰なのか、境界線ははっきりしているのか、住宅ローン残債はあるのかなど、調べておきましょう。
所有者が亡くなった親のままになっていたり、境界線があいまいなケースも珍しくありません。
その場合、名義変更や境界確定測量などの手続きが必要になります。
それぞれの手続きについては、下記の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
境界未確定(筆界未定)の土地は売却できない?未確定のまま売るリスク
境界未確定(筆界未定)の土地を売却する方法や費用について紹介しています。売主には境界明示義務があるため、事前にどこが境界線か確認しておく必要があります。曖昧なまま売ると買主が住宅ローンの借入ができないなどのリスクがありますので注意してください。
相続したマンションの名義変更を自分で法務局にいってやる方法を紹介しています。必要書類や費用、相続税などの税金、登記変更手続きを司法書士に依頼するケースについても解説していますので参考にしてください。マンションを相続したときに、何を優先させるべきかがわかります。
また住宅ローン残債がある場合は、完済しておかないと売却することができません。
売却代金でローン返済するのであれば、銀行へ連絡して書類を準備してもらわなければなりませんので注意してください。
ローン残債のあるマンションを売却するときに銀行への連絡はいつする?
この記事では住宅ローン残債があるマンションを売るときの銀行へ連絡するタイミングについて紹介しています。抵当権抹消手続きまでの流れや一括返済する方法の決め方を知っておくことで、ローンが残っている家の売却をスムーズに進めることができます。
すでに返済済みであっても、抵当権がそのままになっているケースもありますので確認しましょう。
売却代金を決める
不動産をいくらで売却するのか決めます。
売却代金は概算ではなく、相場価格をもとに決めてください。
買主は「できるだけ安く買いたい」「損をしたくない」と思っていますので、売却代金に対して、本当に妥当なのかどうか少なからず疑念を抱いています。
買主に内覧してもらう
取引相手が知人や親戚の場合、最初に室内を見てもらっているかもしれませんが、売却代金を決めたうえでもう一度見てもらったほうが良いかもしれません。
買主は売却代金と物件を照らし合わせ、金額が妥当かどうか判断するからです。
エアコンなどの付帯設備を置いていくのか、持っていくのかという打ち合わせも必要になりますので、内覧してもらって話しを詰めてください。
条件交渉をおこなう
買主に内覧してもらったら、条件交渉をおこないます。
売却金額はもちろん、手付金や売買契約の日程などについても取り決めましょう。
手付金の目安は、売買代金の10%です。
安すぎても、高すぎてもリスクがあるため、10%で設定するのがベターです。
また売買契約までの期間が長すぎると、気が変わってしまったり、取り決めた内容に不満が生じてしまったりしますので、なるべく早く契約日を設定してください。
必要書類を揃える
売買取引に必要な書類を揃えます。
書類に不備があると売買取引ができず、日程を調整し直さなければいけなくなります。
引越しの予定を変更することになったり、銀行に抵当権抹消登記のための書類を作り直してもらわなければいけなくなったりしますので、不備がないようにしっかりと準備しましょう。
不動産を個人売買するときに必要な書類の詳細については、後述で詳しく解説します。
重要事項説明書を宅地建物取引士に作成してもらう
売買契約を締結する前に、宅地建物取引士の資格を持っている人に重要事項説明書を作成してもらいます。
重要事項説明書は、買主がローンを組むためにも必要ですし、後からトラブルに発展させないためにも大事な役割を担います。
ただし仲介依頼していない個人売買の場合、書類を作成してもらったからといって、その不動産会社が取引に対して責任を負ってくれるわけではありません。
売買契約書を作成する
売買契約を締結するために、売買契約書を作成します。
また売買契約書は課税文書のため、収入印紙を貼付しなければなりません。
印紙代の負担割合などについても事前に話し合っておき、売買契約当日までに準備します。
売買契約を締結する
重要事項説明書と売買契約書、その他の必要書類が揃ったら、いよいよ売買契約の締結です。
取り決めた内容を再度確認し、双方が納得すれば、売買契約書に署名および捺印します。
さらに印紙を貼付し、割印をすることで売買契約書としての効力を持ちます。
忘れてしまうと売買契約書として認められませんので、注意してください。
売買契約を締結するときに、買主から手付金を受け取るのが一般的です。
物件の引き渡し・決済
鍵を買主に渡すことで、物件の引き渡しとなります。
物件の引き渡しは、売却代金の受領と同時におこないます。
買主が銀行から融資を受けて売却代金を支払う場合は、銀行の一室を借りて、司法書士の立会いのもとおこなうのが一般的です。
さらに物件に住宅ローン残債がある場合は、買主から売却代金を受け取ったら、そのまま融資先の銀行へ振り込んで完済します。
住宅ローンを完済すると銀行から抵当権抹消登記に必要な書類を発行してもらえるので、司法書士に渡して登記手続きをおこなってもらいます。
司法書士に登記手続きをおこなってもらう
決済が終わったら、司法書士に登記手続きをしてもらいます。
登記が無事終わると、所有者が売主から買主に移り、売買取引完了となります。
個人間売買する場合、不動産取引における様々な手続きを自分たちでおこなわなければならないことが分かったと思います。
では、不動産売却に必要な書類について紹介していきます。
必要書類は余裕を持って準備しておくと安心
個人売買する場合、自分たちで必要書類を確認し、揃えなければなりません。
不動産を売るときに売主が揃えるべき必要書類は、以下のとおりです。
- 登記簿謄本
- 固定資産税評価額証明書
- 公図
- 権利証または登記識別情報
- 実印と印鑑証明書
- 領収証
- 本人確認書類
買主側には、以下の書類を準備してもらいましょう。
買主側が用意する必要書類
- 住民票
- 実印と印鑑証明書
売買契約書に記載しなければならない12項目を確認しておこう
売買契約書に形式はありませんが、以下の項目を記載しなければなりません。
- 当事者の氏名・住所
- 不動産の所在地
- 取引金額とその支払い時期および支払い方法
- 引き渡しの時期
- 移転登記の申請時期
- 手付金の額と受領の時期および目的
- 契約解除に関する事項
- 損害賠償額および違約金について
- ローンの斡旋内容および不成立の場合の措置(住宅ローン特約)
- 天災などによる損害の負担について
- 瑕疵担保責任について
- 公租公課の負担における起算日
上記は、宅地建物取引業法で記載するべき内容として決められている項目です。
買主と話し合いながら、作成してください。
その他にも、必要があれば通路に関する問題や建物の修繕、取り壊しなどの問題についても記載しましょう。
消費税はかからないので売却価格は税抜で考える
売却代金に対して消費税がかかると思っている人もいますが、個人で売るときは課税されません。
消費税が課税されるのは、法人または個人事業主が不動産を売るときです。
また法人や個人事業主が売却する場合も、免税事業者に該当するかどうかで、消費税の課税義務の有無が決まります。
不動産売却時に消費税を納税しなければならないのは、不動産を売った年の2年前の課税売上高が1,000万円を超えていた人です。
不動産売却時の消費税のルールについて詳しく知りたい人は、下記の記事も合わせてご覧ください。
マンション売却で消費税がかかる場合・かからない場合を徹底解説!
マンション売却で消費税がかかるのはどんなケースでしょうか。個人・法人それぞれのケースで解説しています。課税事業者の該当条件、土地と建物を按分して消費税を割り出す計算方法についても紹介していますので、参考にしてください。
売却するのにも費用や税金はかかる
家や土地を売却するときにかかる費用について、気になる人も多いと思います。
不動産を個人売買したときにかかる税金と費用は、以下のとおりです。
- 司法書士に支払う手数料
- 売買契約書に貼る印紙税
- 抵当権抹消にかかる登録免許税
- 利益に対して課税される譲渡所得税・住民税
不動産会社に売却を依頼する場合は、上記に加えて仲介手数料もかかります。
不動産を売却するときにかかる費用について詳しく知りたい人は、以下の記事も合わせてご覧ください。
マンション売却でかかる諸費用を解説!売却時に「戻ってくるお金」も把握しよう
マンション売却でかかる諸費用は?戻ってくるお金があるって本当?この記事では、マンションを売ったときの手取りを把握するために、仲介手数料の相場や司法書士費用、リフォーム費用について紹介しています。火災保険の保険料、団信の保証料は返金されます。
まとめ「不動産を個人売買するのはハードルが高い」
不動産を個人売買するのはハードルが高いため、不動産会社や司法書士に手続きをサポートしてもらうことをおすすめします。
素人が個人売買すると、リスク管理が不十分で、後から言った言わないのトラブルに発展しやすいという落とし穴があります。
不動産をめぐるトラブルは裁判沙汰になってしまうことも珍しくなく、長期化するため、時間や費用を多く費やすことになってしまいます。
安心して売買取引を進めるためには、取引相手が身内だったとしても、専門家に間に入ってもらったほうが良いでしょう。
イエウールの簡単査定を利用すれば、個人売買をサポートしてくれる不動産会社を簡単に見つけられます。
イエウールで一括査定したら310万も高くなった
管理人がイエウールで自宅マンションを一括査定したところ、街の不動産会社より310万円も高い査定価格をだしてもらえました。
イエウールはクレームに厳しい会社なので、不動産業者からしつこい営業電話がかかってくることはありません。
物件情報を入力するだけの簡単手続きで、すぐに売却相場が分かる手軽さも好評です。